相手を拝む心｜習学ガイド

お釈迦さまの
説いた教え
リターンズ

相手を拝む心

話し手：関東教区（青年担当）
齊藤　貴也さん

（妙法蓮華経(みょうほうれんげきょう)「常(じょう)不軽(ふきょう)菩薩(ぼさっ)品(ぽん)第(だい)二十」より）
はるか昔(むかし)、「常(じょう)不軽(ふきょう)」と呼(よ)ばれる一人(ひとり)のお坊(ぼう)さんがいました。
このお坊(ぼう)さんは、ほかのお坊(ぼう)さんのように、お経(きょう)を唱(とな)えたり、人前(ひとまえ)で説法(せっぽう)をすることはありませんでした。
ただひたすら、朝(あさ)から晩(ばん)まで、人(ひと)を見(み)ては近寄(ちかよ)って手(て)を合(あ)わせ、
「私(わたし)はあなたを敬(うやま)います。あなたは必(かなら)ず仏(ほとけ)さまになる人(ひと)です」と拝(おが)むのです。
お年寄(としよ)りでも子(こ)どもでも、女性(じょせい)でも男性(だんせい)でも、人(ひと)を見(み)れば、わざわざ駆(か)け寄(よ)って、
「あなたがたはみんな仏(ほとけ)になる人(ひと)です」と言(い)ってほめたたえるのでした。
その時代(じだい)は世(よ)の中(なか)が乱(みだ)れていて、人(ひと)を見下(みくだ)したり、「自分(じぶん)が一番(いちばん)」と悟(さと)りきったかのように思(おも)い込(こ)んでいる人(ひと)がたくさんいました。
お坊(ぼう)さんの言葉(ことば)の意味(いみ)が分(わ)からずに腹(はら)を立(た)て、杖(つえ)や棒(ぼう)でたたいたり、石(いし)や瓦(かわら)を投(な)げつけたりする者(もの)もいました。
それでもこのお坊(ぼう)さんは、怒(いか)りもせずに遠(とお)くに逃(に)げ、離(はな)れたところから、
「私(わたし)には、どうしてもあなたがたを軽(かろ)んじることができません。あなたがたは必(かなら)ず仏(ほとけ)になる人(ひと)たちだからです」と大声(おおごえ)で唱(とな)えたのでした。
月日(つきひ)が経(た)っても変(か)わらずに同(おな)じことを言(い)い続(つづ)けるお坊(ぼう)さんの姿(すがた)に、やがて人々(ひとびと)の心(こころ)も変化(へんか)していきました。
かつては石(いし)を投(な)げつけたり、ののしったりしていた人(ひと)も、心(こころ)のどこかで「このお坊(ぼう)さんはすごいなあ」と感動(かんどう)するようになりました。
そして、親(した)しみを込(こ)めて「常(じょう)不軽(ふきょう)」と呼(よ)ぶようになったのです。
みんな仏(ほとけ)さまの子(こ)であり、人間(にんげん)は一人(ひとり)残(のこ)らず仏(ほとけ)さまになれるという仏(ほとけ)さまの教(おし)えを信(しん)じて、
そのいのちが終(お)わるときまで人(ひと)びとを拝(おが)み続(つづ)けたこのお坊(ぼう)さんは、「常(じょう)不軽(ふきょう)菩薩(ぼさつ)」として生(う)まれ変(か)わり、
二千億という仏(ほとけ)さまに会(あ)いました。
生(う)まれ変(か)わるごとにたくさんの仏(ほとけ)さまに次々(つぎつぎ)とお会(あ)いし、その繰(く)り返(かえ)しのなかで仏(ほとけ)の悟(さと)りを得(え)ることができたのです。
お釈迦(しゃか)さまは、「このときの常(じょう)不軽(ふきょう)菩薩(ぼさつ)こそ、私(わたし)なのです」と宣言(せんげん)されています。