良医とその子どもたち
話し手:関東教区(青年担当)
黒澤 康人さん
(妙法蓮華経「如来寿量品第十六」より)
一人の優れたお医者さんがいました。
あるとき他国に出かけている最中に、子どもたちが誤って毒薬を飲んでしまいました。
時間がたつにつれて毒が体じゅうにまわり、子どもたちは地べたを転げ回って苦しみました。
帰ってきた父はその姿を見て驚き、よく効く薬を作って与えます。
「この薬はとても効くんだよ。色も味も香りもいい。これを飲めばいまの苦しみが治るばかりではなく、これから先も病気一つしなくなるのだよ」。
しかし、そんな父の言葉も、本心を失っている子どもたちには届きません。
なんとかして子どもたちが自分から薬を飲んでくれる方法はないか。
そう考えた父は、次のように言い残して子どもたちの前から姿を消します。
「私は年をとって体も弱くなり、あまり先がない。それなのに、おまえたちを置いてまた他国に出かけなければならない。
薬を置いていくから飲むのだよ。飲めば絶対よくなるから心配はいらないよ」。
そしてしばらくたったある日、旅先から使いをやり、「お父さまはお亡くなりになりました」と告げさせました。
子どもたちは父が亡くなったことを知り、大変悲しみました。
毒によって気が動転していた子どもたちは、ようやく本心を取り戻し、父が残した言葉を思い出して薬を飲みました。
すると、体から毒は消え、子どもたちはすっかり元気になりました。
そんなわが子の様子を知り、父は再び子どもたちの前に姿を現したのです。
父親は「仏さま」であり、毒を飲んで苦しんでいる子どもたちは、「私たち」。
父が子どもたちに与えた薬は「仏さまの教え」です。
悩んだり苦しんだりしている私たちを、仏さまはわが子のように心配しながら、きっといつか自分から仏さまの教えをつかむ日を信じて見守ってくださっているのです。
Various contentsその他のコンテンツ
法華経は私たちの日常にあふれている──
もっとわかりやすく、おもしろい。そして手にとりやすい形でお届けします。