column series.07 ちょっと聞いて~ -母と向き合う私のものがたり-

物忘れ?私もしょっちゅう。母の事言えないけど…。
大事にしている物ほど無くなっちゃうのよね。段々と寒くなってきたある日のこと、こんな事がありました。ちょっと聞いて~

NO.1『リモコン』

2022.11.1

へっぽこ娘

「ちょっと来てくれる?」と呼ばれ夕飯の支度の手を止めて、1階の母の部屋へ降りて行くと「これが全然つかないのよ」と指差す先にはテレビが。近頃ではテレビという名称すらすぐには言葉に出なくなった母。またかと思いながらコンセントを確認するとやはり抜いてある。「これじゃ付かないよ」と言いながら差し込み「リモコンは?」と聞くと「これでしょ?」と言って差し出したのは照明用のリモコン。「これは電気を点けるのだよ。黒いテレビのリモコンは?」「そんなのないわよ」と言う。周りを見渡し、母がしまいそうな引き出しや差し当たっての所を探しても見当たらない。「あーいつものようにどこかにしまって、しまったことすら忘れているんだな」夕飯の支度が気になる私は「リモコンがないとつかないんだよ。悪いけど今それを探している暇ないから、自分で探して!」と少し冷たい口調で言いながら、母の部屋を後にした。「いいわよ!もう観ないから!」と母も負けずに強い口調で私の背中に向かって言い返す。たかがリモコンだけど、物がごちゃごちゃになっている母の部屋からそれを探すのにどれだけの時間を要するかを知っている私は、「もう、いい加減にして!」と思いながら夕飯の支度を再開した。

夕食の食卓についた母に「リモコン見つかった?」と聞くと、なくしたことすら覚えていない。「忘れているくらいだから、探さなくてもいいよね」自分自身に言い聞かせつつ「今度の休日にゆっくり探してあげよう」と思った。

次の日母が、大事にしている物を全部入れ、どこへ行くにも持ち歩いている大きなバッグの中身を広げて確認していると、そこから黒いテレビのリモコンが出てきた。

聞いてくれてありがとう。

リモコン

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